“正月、ぼくは「寛容」に、ユーモアとルビを振りたかった。”
“ 「できること」を、毎日10年続けると、どうなるか?
 つまり「じぶん」という人間が、「変形」するのです。
 「できること」を、もっとよくできるように
 「変形」してしまうのです。
 ま、わかりやすく言えば、
 ボートを漕いでいれば腕が太くなったりする。
 毎日恋愛小説を書いていれば、
 こころの恋愛的なところが人並み以上に発達する。
 そういうことが、他の人よりも得意になる。
 で、一丁前になって、それでめしが食えるようになる。
 肉体も、精神も、ある意味「異様」に「変形」して、
 プロフェッショナルというものになるんだと思います。”
“ 人間、年をとると、だんだんと、
 じぶんの「できないこと」「逃げていたこと」が、
 はっきりと見えてくるものです。”
“ 「女は、男に見せようと思って、
  おしゃれしてるんじゃないのよー。
  女は、他の女に見せるためにおしゃれをするのよ」
 と、あるとき、ゲイの男性に聞いたのでした。
 これはもう、ある種の文化的衝撃でしたね。
 
 そうかぁ、と、ものすごく納得しちゃったのでした。
 多くの物語のなかに登場する女性が、
 男の目を惹きつけるために、
 おしゃれをしたり化粧をしたりします。
 そういうことが、ないわけじゃないとは思います。
 だけど、基本的に(現代の、かな?)女性は、
 女性同士が見たり見せたりするために、
 おしゃれをしていると考えたほうが、
 事実と合っているように思えます。
 
 その後も、よくぼくは女性に、そのことについて、
 質問したりしてきました。
 「そうに決まってる」という返事が、ほとんどでした。
 どうだろう、ざっと8割5分くらいのイメージかなぁ。
 たしかに、街を行く女性は、
 ほんとうによく、他の女性を見ています。
 もう少し、そのことについて取材すると、
 「男は、女のおしゃれのことなんか知らないし‥‥」と、
 そういえば、ほんとにそうだということを言います。
 でも、女性のおしゃれに詳しい男もいるよ、と言えば、
 「それはゲイの人たちでしょ」とバサッとね。
 そうか、わかってるのは、女性側の人たちか。”

 あの日からの、ぼくらの目の前や、ぼくらの背後には、
 経験したことのなかった状況が現われました。
 はじめてだし、暗いし、見えないのだから、
 「考える」ことにたどりつくより前に、
 「悩む」ことでこころがいっぱいになります。

 ぜんぶを解決する魔法の方程式みたいなものは、
 おそらく、ないのだと思います。
 「これはできた」「ここはわかった」「これだけ進んだ」
 というような、みんなの手探りの経験の総和が、
 ぼくらの手に入れた財産であり、材料だと思います。
 失敗も含めた材料が、やっと揃いはじめたいま、
 やっと「考える」ための時がやってきたのかもしれない。

“ 「できる」という感触を知らないものですから、
 わけのわからない恐怖が背中に張り付いてるんです。
 「できない」ような気がしているから、苦悩するんです。

 「できたことがある」ということが増えていくと、
 「このあたりは、あれに似てるな」とか、
 「ここはスキがあったほうがいいんだ」とか、
 解決への道筋が明るく見えてきます。
 そうなってはじめて、ほんとうに考えることが、
 できるようになっていくのだと思います。”
“ 世界中の悩みを一手に引き受けたような顔をして、
 ひとつのコピーを書くのに、天井を見つめたり、
 公園に出かけて空気を変えようとしたり、
 ヒントになりそうな本を虚ろな目で読み出したり、
 腕組みして周囲をにらみつけてみたり、
 やっていたことがあるんです、ぼくも。”
“ 目的も、組織も、時間も、ぜんぶ、
 ぐにゃぐにゃぬめぬめと生きもののように、
 かたちを変えつつ動いているんだとイメージしてます。”
“ 「こうなるだろう」と予想をすることは、みんな、
 これまでにもさんざんやってきた。
 だけど、いまは、「こうなりたい」であるとか
 「こうしたい」を軸にして、
 確率の低い側に怖れずに賭けていく、
 そういう時期なんだと思うのです。
 その実現が、「奇跡」と、呼ばれるのかもしれません。”
“ 最近は「ムラサキシャチホコ」という蛾を知ってね。
 けっこうめずらしくもなく、日本中にいる蛾らしいんだ。
 だけど、「枯葉がまるまったもの」に似すぎてるので、
 人間が見ているのに、見た気になってないらしい。
 だって、平らな羽に立体的に、3Dで、
 まるまった枯葉の絵が描いてあるんだからね。”